性質決定

性質決定(〔仏〕カリフィカシオン(qualification)、〔独〕クヴァリフィカツィオーン(Qualifikation))とは、国際私法規範の解釈において、単位法律関係として使用している法概念の(実質法上の)内包外延が法域間で互いに異なる場合に、どの法域の実質法を基準として単位法律関係の内包外延を劃定すればよいかという問題である。法性決定とも呼ばれる。

1891年にドイツのフランツ・カーン(Franz Kahn)が、「法律の牴触(Gesetzeskollisionen)」という論文において、その一類型として「隠れた法律の牴触(latente Gesetzeskollisionen)」を指摘したのがはじまりだといわれる。

続いて1897年にフランスのエティエンヌ・バルタン(Etienne Bartin)が「De l'impossibilité d'arriver à la suppression définitive des conflits de lois」において、次の二つの事例を指摘した:

  1. 配偶者の死亡を原因とする財産請求権の成否を、相続という単位法律関係に包摂するか、夫婦財産制という単位法律関係に包摂するかという問題
  2. 自筆遺言の有効性を、行為能力という単位法律関係に包摂するか、法律行為の方式という単位法律関係に包摂するかという問題

これにより、性質決定問題の実務的重要性が認識された。

この問題に対しては、次の解決方法が提示されている:

  1. 法廷地法説(lex fori):法廷地法(実質法)を基準として国際私法上の単位法律関係の内包外延を劃定すべきだとする説。カーンやバルタンはこの説を主張したため、伝統的な通説とされる。
  2. 準拠法説(lex causae):準拠法(実質法)を基準として国際私法上の単位法律関係の内包外延を劃定すべきだとする説。フランスのデパニェ(Despagnet)が「Des conflits de lois relatifs à la qualification des rapports juridiques」において提唱し、ヴァレリー、シュルヴィルなどが支持した。
  3. 国際私法独自説:法廷地法も準拠法のいずれも基準とならないという説。そうではなく、比較法により(法廷地法でも準拠法でもない)第三の法概念(tertium comparationis)をつくり出し、それにより国際私法上の単位法律関係の内包外延を劃定すべきだと主張する。ドイツのエルンスト・ラーベル(Ernst Rabel)が「Das Problem der Qualifikation」において提唱した。