欧州連合

欧州連合
© European Community, 2005

欧州連合(独:Europäische Union (EU)、仏:Union européenne (UE)、英:European Union (EU)、伊:Unione Europea (UE)、蘭:Europese Unie (EU)、西:Unión Europea (UE)、葡:União Europeia (UE)、波:Unia Europejska (UE)、洪:Európai Unió (EU)、芬:Euroopan unioni (EU)、典:Europeiska unionen (EU)、チェコ:Evropská unie (EU)、希:Ευρωπαϊκή Ένωση (ΕΕ)、ルーマニア:Uniunea Europeană (UE)、ブルガリア:Европейският съюз (ЕС))は、1992年2月7日に調印された「欧州連合に関する条約」(マーストリヒト条約)により設立された、ヨーロッパ国家間の国際組織。条約の発効は1993年11月1日。

ヨーロッパ大陸
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マーストリヒト条約による欧州連合の設立は、「ヨーロッパの諸人民の間の絶えず緊密化していく統一体(union)を創造するプロセスにおいて、新たな段階(une nouvelle étape dans le processus créant une union sans cesse plus étroite entre les peuples de l'Europe)」を劃するものであるとされる(欧州連合条約1条2項)。実は、この「絶えず緊密化していく統一体(une union sans cesse plus étroite)」という文言は、すでに、1957年当初の欧州経済共同体の設立条約の前文において使用されていたものである。すなわち、「ヨーロッパの諸人民の間の絶えず緊密化していく統一体を定礎する決意で(déterminés à établir les fondements d'une union sans cesse plus étroite entre les peuples européens)」欧州経済共同体条約は締結されたのであった。

要するに、欧州統合運動の目的はヨーロッパ諸民族の友好・融和・結合にあり、その一段階を劃するものが欧州連合である。

呼称

欧州連合は23の公用語をもっており、これらすべての公用語における名称が正式名称ということになる。

具体的には、この項の冒頭に掲げた通りである。ラテン語の影響が強い言語においては、軒並みラテン語のUnio Europaeaに相当する語を用いているため、各言語における名詞と形容詞の統語論的構造により、「UE」(主としてロマンス系言語)又は「EU」(主としてゲルマン系言語)が略称となる場合が多い。しかし、当然のことながら、ギリシア語ではギリシャ文字でΕΕ(エプシロン・エプシロン)となり、ブルガリア語ではキリル文字でЕС(エ・ス)となる。

日本では、「欧州連合」または「ヨーロッパ連合」と訳され、「EU」という略称が用いられることが多い。

法的性質

欧州連合の法的性質については論争があるが、ドイツ連邦憲法裁判所のマーストリヒト判決が判示したところによれば、「国家連結(Staatenverbund)」である(通説)。現在は、それ自身として法人格を有しないが、欧州憲法条約が施行されれば、法人格を取得することになっている(欧州憲法条約7条)。

加盟国

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EUは拡大を繰り返しているため、加盟国にはたびたび変動がある。設立当初の原加盟国は、フランス・ドイツ・イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルク・連合王国・デンマーク・アイルランド・ギリシア・スペイン・ポルトガルの12カ国であったが、その後、3度の拡大により次の国々が加わり、現在では27カ国となっている。

  • 北方拡大(1995年1月1日):オーストリア、スウェーデン、フィンランド。
  • 第一次東方拡大(2004年5月1日):ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロヴァキア、スロヴェニア、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、マルタ、キプロス。
  • 第二次東方拡大(2007年1月1日):ブルガリア・ルーマニア。

さらに、トルコ・クロアチア・マケドニアと加盟交渉が行われている。

構造

現行の欧州連合条約によれば、欧州連合の基盤は欧州諸共同体であり、さらに、それは、共同外交安全保障政策および刑事警察司法協力により補われる(欧州連合条約1条3項)。

これを分かりやすく例解するために、「欧州諸共同体・共同外交安全保障政策・刑事警察司法協力という三本の柱を束ねる土台と屋根こそが欧州連合である」という説明がなされることがある。このことから、欧州連合の構造は「三柱モデル」ないし「神殿モデル」であると呼ばれる。

欧州憲法条約が施行されれば、この神殿構造には終止符が打たれることになる。

機関

欧州連合は単一の機構枠組をもち、それらは措置の一貫性と継続性を持たなければならないものとされる(欧州連合条約3条1項)。何だか当たり前のことを言っているようだが、実は、欧州連合の基礎となった欧州石炭鉄鋼共同体・欧州経済共同体・欧州原子力共同体においては、もともと執行機関・司法機関が共同体ごとに分かれていた歴史があり、このような非効率な状態は、1965年の機関合併条約によりようやく解消されたのであった。

現在においては、機関として、各国の首班が一堂に会する欧州理事会のほか、欧州議会理事会欧州委員会欧州司法裁判所欧州会計検査院欧州中央銀行欧州経済社会委員会欧州地域委員会などの機関がある。もっとも、現行法によれば、欧州連合は法人格を持たないために、法的な意味で「欧州連合の機関」と呼ぶことについては疑問を呈する見解が多い。もっとも、欧州憲法条約が発効すれば、これらは法的にも「欧州連合の機関」となることに疑いはない。

従来、欧州議会・理事会・欧州委員会・欧州司法裁判所・欧州会計検査院の5機関を共同体の「主要機関(Hauptorgane)」と呼び、その他の機関を「副次的機関(Nebenorgane)」と呼んで区別してきた慣行がある(欧州理事会はEUの機関ではあっても共同体の機関ではない)。

これに対して、欧州憲法条約においては、前述の「主要機関」に加えて欧州理事会・欧州中央銀行が「機関」として一括して論じ、欧州経済社会委員会・欧州地域委員会を「諮問機関」と位置づける、という区別をしている。

機構改革

近年における加盟国の急速な拡大に伴い、諸機関の機能性を維持するために、国制改革が急務とされた。このため、ニース条約が締結され、さらに、コンヴェンションを開催し、その草案を元に政府間交渉が行われ、欧州憲法条約が締結された。但し、その発効には、すべての締約国の批准を要するため、同条約が実際に発効するかについては、微妙な情勢となっている。

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