欧州憲法条約1条

欧州憲法条約1条は、欧州憲法条約において、欧州連合の存在の根拠となる条文。第一部第一編(欧州連合の定義と目的)にある。

欧州連合自体は憲法条約以前から存在するが、「設立する(begründen)」という文言を使用しており、従来の欧州連合との継続性を一旦断絶させ、正統性の根拠を新たにするような解釈をする余地を残している。

欧州連合の正統性根拠となる設立主体については、間接的には「市民(Bürgerinnen und Bürger)」と「国家(Staaten)」の意思に導かれるとするが、直接的な欧州連合の設立主体は依然として「国家」である。この意味で、制憲者たる民族(Volk)の意思による憲法制定という本来の憲法制定のモデルと、国家の意思の合致による国際組織の設立(「条約の主(Herren der Verträge)」としての加盟国)という旧来の側面の折衷となっているといえよう。

日本語訳(編集部作成)

第一部第一条 欧州連合の設立

(1) ヨーロッパの市民及び諸国家の、自らの未来を共同して形成する意思に導かれ、この憲法は、欧州連合を設立し、諸加盟国は、管轄(Zuständigkeiten、権限)を、その共同の目的を実現するため、欧州連合に移譲する。欧州連合は、この目的に資する諸加盟国の政策を調整し、かつ、諸加盟国により移譲された管轄(権限)を、共同体的な方法により(in gemeinschaftlicher Weise)用いる。

(2) 欧州連合は、欧州連合の諸価値を尊重し、かつ、当該諸価値を共同して促進するよう自らを義務づけるすべてのヨーロッパ国家に対して、開かれている(offen、加盟の道が閉ざされていない)。