欧州諸共同体
欧州諸共同体(〔独〕Europäische Gemeinschaften、〔仏〕Communautés européennes、〔英〕European Communities)は、現在、欧州共同体と欧州原子力共同体の総称。したがって、単数形の「欧州共同体」とは意味が異なるので、この点注意が必要であるが、日本語には単数形と複数形の区別がないため、混同されて使用されることが多い。
概念史
欧州石炭鉄鋼共同体の発足後、ローマ条約により新たに欧州経済共同体と欧州原子力共同体(ユーラトム)が成立したため、その三つの共同体を称して「欧州諸共同体」と呼んでいた。
しかし、EUの設立条約であるマーストリヒト条約により、欧州経済共同体が欧州共同体と改称されることになった。したがって、欧州石炭鉄鋼共同体・欧州共同体・欧州原子力共同体の三共同体のことを指して欧州諸共同体と呼ぶことになった。
さらに、欧州石炭鉄鋼共同体条約の期限が徒過し、欧州石炭鉄鋼共同体が消滅したため、現在では、欧州共同体と欧州原子力共同体の二つの共同体を総称して「欧州諸共同体」と呼んでいる。
しかしながら、日本語では、欧州経済共同体が欧州共同体に解消される以前に「欧州共同体」なる呼称が欧州諸共同体を指す日本語として定着してしまったために、現在、日本語で「欧州共同体」なる用語が用いられている場合には、実際には欧州諸共同体を指している場合が少なくない。
また、日本では「欧州諸共同体は欧州連合に発展解消した」との誤解が相当程度流布しているため、欧州諸共同体は既に消滅していると誤解されている場合もある。しかし、欧州諸共同体は「EUの第一の柱」として現在でも存在しており、欧州諸共同体が欧州連合に発展解消するのは、欧州憲法条約の発効後の話である。しかし、欧州憲法条約はまだ発効していないし、批准状況によっては発効が不可能となる可能性もある。