条約侵害手続

じょうやくしんがいてつづき

条約侵害手続(Vertragsverletzungsverfahren)は、欧州諸共同体において、加盟国が条約の規定に違反した場合にとられる手続。欧州委員会のイニシアティヴによるものと、加盟国のイニシアティヴによるものがあるが、加盟国同士の政治的配慮により、後者の手続が用いられることは少ない。実務上行われているのは、ほとんどが前者の手続である。

また、手続法的には、両方の手続が並存することも可能で、加盟国のイニシアティヴで条約侵害手続が開始された場合に、同じ案件について、欧州委員会が新たに独自のイニシアティヴで条約侵害手続を開始することも可能である。

欧州委員会のイニシアティヴによるものは、概ね、次のような段階を践む:

  1. 欧州委員会の催告(以下、欧州共同体条約226条
  2. 欧州委員会の理由を付した意見
  3. 欧州委員会による確認の訴えの提起
  4. 欧州司法裁判所の確認判決(以下、欧州共同体条約228条
  5. 欧州委員会の催告
  6. 欧州委員会の理由を付した意見
  7. 欧州委員会による確認の訴えの提起、強制金等の申述
  8. 欧州司法裁判所の確認判決、強制金等決定

加盟国のイニシアティヴによるものは、概ね、次のような段階を践む:

  1. 加盟国の申請(以下、欧州共同体条約227条
  2. 欧州委員会における聴聞手続(対立構造)
  3. 欧州委員会の理由を付した意見(但し、ない場合もあり)
  4. 加盟国による確認の訴えの提起
  5. 欧州司法裁判所の確認判決(以下、欧州共同体条約228条
  6. 欧州委員会の催告
  7. 欧州委員会の理由を付した意見
  8. 欧州委員会による確認の訴えの提起、強制金等の申述
  9. 欧州司法裁判所の確認判決、強制金等決定