本国法
本国法(〔羅〕lex patriae)とは、国際私法における属人法(〔独〕Personalstatut)の一種とされ、具体的には国籍を連結点として定められる準拠法をいう。
もともと、属人法の連結点としては住所(〔羅〕domicilium)を使用するのが伝統であったが、1804年のフランス・ナポレオン民法典により、初めて国籍が属人法の連結点として採用された(3条3項)。もっともこの規定自体は「人の身分及び能力に関する法律は、外国に住むフランス人をも支配する(Les lois concernant l'état et la capacité des personnes régissent les Français, même résidant en pays étranger)」というもので、一方的牴触規定である(解釈上双方的牴触規定とされる)。
さらに、1851年にトリノでパスクヮーレ・スタニスラオ・マンチニ(Pasquale Stanislao Mancini)が「国際法の基盤としてのナショナリティについて(Della nationalità come fondamento del diritto delle genti)」なる講演を行ったことからイタリアに本国法学派(新イタリア学派)が興った。この学派の影響は凄まじく、長らくイタリアにおいては身分関係のみならず債務関係においても本国法が用いられていた(しかし、1995年に改正された)。
現在においても、属人法については本国法主義と住所地法主義の対立があり、国際的な国際私法統一の障碍となっている。両者を止揚するものとして常居所地法という概念が開発されたが、諸国の立法においては依然として本国法や住所地法が大きなウェイトを占めており、根本的解決には至っていない。