先決問題

先決問題(〔独〕Vorfrage)とは、問題となっている法律関係の存否等の問題(本問題、〔独〕Hauptfrage)が、時間的・論理的に先行する別の法律関係の存否等の問題に依存する場合に、この先行する問題をいう。例えば、相続を本問題とする場合に、相続人と被相続人の間の法律関係の存否に関する問題(婚姻、養子縁組など)が先決問題である。先決問題の準拠法をいかに解するかという点が、国際私法上重要な論点となっており(1931年にメルヒオール(Melchor)がこの問題を発見したとされる)、概ね次のような考え方が対立している:

  • 本問題準拠法説:先決問題の準拠法を本問題に一致させるべきであるとする説。
  • 本問題準拠法所属国国際私法説:本問題の準拠法所属国の国際私法を先決問題に適用して先決問題の準拠法を決定すべきであるとする説。総括指定説を理論的な根拠としており、先決問題について、法廷地と本問題準拠法所属国の判決の国際的調和が図れる点が長所であるとされる。先決問題の発見者であるメルヒオールもこの見解であった。
  • 法廷地国際私法説:先決問題にも単純に法廷地の国際私法を適用して準拠法を決定すれば十分であるとする説。先決問題を特別扱いする必要はないとする説であり、先決問題否定説とも呼ばれる。

さらに、ドイツのゲアハルト・ケーゲル(Gerhard Kegel)などにより、法廷地国際私法説と本問題準拠法所属国国際私法説の折衷説も主張されている。