ボヘミア
ボヘミア(〔羅〕Bohemia、〔独〕Böhmen(ベーメン)、〔チェコ〕Čechý(チェヒー))は、中央ヨーロッパの地域の一つ。エルツ山脈、ズデーテン山脈、ボヘミア森(〔独〕Böhmenwald)、モラヴィア丘陵に囲まれた地域(盆地)一帯を指し、現在のチェコ共和国領の西部から中部にかけてにあたる。ヴルタヴァ川(〔チェコ〕Vltava、〔独〕Moldau(モルダウ川))が流れる。
中心都市はプラハ(〔チェコ〕Praha、〔独〕Prag(プラーク))で、現在、チェコ共和国の首都となっている。その他の重要都市には、次のものがある(ボヘミアは、歴史的にドイツとの結びつきが強いため、ドイツ語名を有する都市が多い):
- プルゼン(Plzeň):日本語ではプルゼニ、プルゼニュとも表記される。ドイツ語ではピルゼン(Pilsen)。いわゆるピルスナー・ビール(〔独〕Pilsner Bier)の発祥地。西南ボヘミア最大の都市。工業地帯で、機械工業のシュコダ(Škoda)がある。
- チェスケー・ブディェヨヴィツェ(České Budějovice):チェコのブディェヨヴィツェという意味。ドイツではブートヴァイス(Budweis)。いわゆる「バドワイザー(Budweiser)」は、本来この都市のビールを指す。南ボヘミアの最大都市。
- ウースティー・ナド・ラベム(Ústí nad Labem):エルベ川流域のウースティーという意味。ドイツ語ではアウシッヒ・アン・デア・エルベ(Aussig an der Elbe)。北ボヘミアの中心都市。工業地帯。
- パルドゥビツェ(Pardubice):ドイツ語ではパルドゥビッツ(Pardubitz)。東ボヘミア。重要産業に化学工業など。
- リベレツ(Liberec):ドイツ語ではライヒェンベルク(Reichenberg)。北ボヘミアの最重要都市。
- トルトノフ(Trutnov):ドイツ語ではトラウテンアウ(Trautenau)。重要産業に、繊維工業、電気工業、林業、観光業、鉱業(石炭)など。
- フラデツ・クラーロヴェー(Hradec Králové):ドイツ語ではケーニッヒグレーツ(Königgrätz)。東ボヘミア。
ボヘミアの周囲は、ザクセン(サクソニア)、シュレジア(シュレージエン、シロンスク)、モラヴィア(モラヴァ)、オーストリア(エスタライヒ)、バイエルン(バヴァリア)、フランケンに囲まれる(時計回り)。
この地の名称は、この地に定住したケルト族のボイイ人に由来するという。伝説によれば、建国の祖はボヘムス(〔羅〕Bohemus、〔独〕Böhm(ベーム)、〔チェコ〕Čech(チェヒ))である。犂耕者プシェミスル(Přemysl der Pflüger)とリブッサ妃(Libussa)により開かれたとされるプシェミスル家の統治の下で発展し、ボヘミア公(Herzog von Böhmen)は、ボヘミア王(König von Böhmen)となった。
伝統的にドイツとのつながりが強く、ボヘミア王は神聖ローマ帝国(ドイツ王国)の上級貴族として実力を有した。1356年の金印勅書(Goldene Bulle)では、ボヘミア王は選帝侯に確定した。プシェミスル家の断絶後は、ルクセンブルク家がボヘミア王を継承する(1311~1437)。
その後、オーストリアのハプスブルク家がボヘミア王を兼任することが多くなる。神聖ローマ帝国が崩壊し、オーストリア帝国が成立すると、その一部となるが、次第に民族意識が高まり(19世紀の音楽家ベドジッヒ・スメタナ(Bedřich Smetana)など)、第一次世界大戦後、モラヴィア・スロヴァキアとともにチェコスロヴァキアとして独立した。