アムステルダム条約

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アムステルダム条約(Vertrag von Amsterdam)は、1997年10月2日に調印されたEU基本諸条約の改正条約(マーストリヒト条約のアークトゥス・コントラーリウス)。1999年5月1日に発効した。
当時から予定されていた東方拡大(中東欧諸国のEU加盟)に備えて、マーストリヒト条約の抜本的な改正の必要が認識されていたが、1997年6月16日・17日のアムステルダム欧州理事会(議長国:オランダ)において、条約改正交渉が妥結した。これに基いて調印されたのがアムステルダム条約である。
アムステルダム条約においては、次の諸点が改正された:
- 欧州諸共同体の民主化
共同体管轄事項に関して、欧州議会の権限が拡大された。具体的には、共同決定手続(Mitentscheidungsverfahren)の適用範囲が拡大した。 - 共同外交安全保障政策上級代表の新設
共同外交安全保障政策の上級代表(いわゆる「ミスター・ガスプ(Mr. GASP)」)のポストが新設された。このポストは、理事会事務総長が兼任することとされ、1999年10月18日にハビエル・ソラナ元NATO事務総長が就任した。このポストの新設により、共同外交安全保障政策の調整・代表が容易になった一方、理事会議長国首班、ミスター・ガスプ、外交担当の欧州委員会委員の三人が外交の場に登場することになり、更なる改革の必要性が認識された。 - 行政的・民事的な司法内務協力の共同体化
欧州連合の第三の柱を構成していた司法内務分野の協力のうち、査証(ヴィザ)政策や国際私法など、行政的・民事的な部分が共同体化(vergemeinschaften)された。これにより、第三の柱に残ったのは刑事的な司法内務協力のみとなり、以後、「刑事警察司法協力」と呼ばれるようになった。 - 条文番号の振り直し
条約を市民に親しみやすい(bürgernah)ものにするために、枝番号や廃止条文を整理し、条文番号を振りなおした。欧州連合条約はアルファベットの条文番号をやめ、数字の条文番号とした。 - 柔軟性(Flexibilität)
どうしても全加盟国で妥協できない場合に、一部の加盟国の間で統合を先行させることができる強化協力(verstärkte Zusammenarbeit)の仕組みが設けられた。
肝心の機構改革については余り進展がなく、将来の条約改正交渉(ニース条約・欧州憲法条約)が果たすべき課題となった。